岡山 1万人の肉弾戦熱く 西大寺会陽


岡山市東区の西大寺観音院で20日夜に行われた奇祭「西大寺会陽えよう」。3月にも国の重要無形民俗文化財に指定されるとあって、今年は例年以上の盛り上がりを見せ、昨年より約1000人多い約1万人の男衆が本堂に集結。清めの水が熱気で蒸気となり、堂内が白く包まれた。

 午後10時に照明が消され、宝木しんぎが投げ込まれると、男衆はヒートアップ。「うぉー」という声がわき起こり、押し合いへし合いする男衆の群れは波のようにうねった。

 初めて会場を訪れた総社市中原、会社員宮本玲依さん(20)は「テレビでは見ていたが、生で見ると人も多くて迫力がものすごくてびっくりした」と圧倒されていた。

 カナダから観光で訪れた会社員クリス・ホーゲンさん(33)は「カナダでこんな祭りをすると、けんかや事故が相次いで大変なことになる。500年も続くのは、ぶつかり合いながらも思いやりを忘れない日本人だからだと思う」と感激した様子だった。

 初めて会陽に参加した瀬戸内市長船町服部、会社員小山貴康さん(24)は「予想以上の圧力で本堂には少ししかいられなかった。次はしっかりと準備をしていきたい」と話した。15回目という和気町本、会社員太田康昭さん(45)は「枝宝木を手にしたけれど、他の人に取られてしまい悔しさが残る。来年こそは手に出来るよう頑張りたい」と雪辱を誓っていた。

 <福男に2グループ>

 今年の「福男」には「寺坂グループ」の3人と「林グループ」の3人が選ばれた。

 寺坂グループの水道工事業、羽納はのう通浩さん(33)(岡山市中区米田)は3年ぶり3回目の福男。「宝木がはねて、自分の方に寄ってきたように思えた。1年間かけて練習してきたので最高にうれしい。家族が健康で、仕事もうまくいくような1年にしたい」と笑顔を見せていた。

 林グループの岡山市職員重松洋平さん(44)(岡山市東区神崎町)は「宝木を取った瞬間は無我夢中で覚えておらず、終わってから実感がやっとわいてきた。今年も健康に過ごして来年も参加したい」と喜んだ。

 他の福男は次の皆さん。

 ◇寺坂グループ 小林達史さん(33)(同区西大寺)▽羽納直孝さん(35)(同区西大寺松崎)

◇林グループ 藤原三聖さん(43)(同区松新町)▽斎藤雅之さん(44)(同区西大寺中野)
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岡山 西大寺観音院 寺坂、林グループが宝木獲得


西大寺観音院(岡山市東区西大寺中)で20日夜に行われた西大寺会陽で、2本の宝木(しんぎ)を獲得したのは自営業羽納通浩さん(33)=同市中区=ら16人の寺坂グループと、公務員重松洋平さん(44)=同市東区=ら29人の林グループだった。グループとしていずれも2年ぶりとなる福男。宝木を確認する検分所は、約1万人(主催者発表)による争奪戦を制した男たちの興奮で沸き返った。
 宝木獲得は8回目という寺坂グループ。羽納さんは、15年前からチームを組む兄直孝さん(35)=同、会社員小林達史さん(33)=同=の3人一組で臨んだ。男たちの手にはじかれながら近寄ってきたという宝木を夢中でつかむと、直孝さん、小林さんが隠すようにして群衆の外へ運び出し、磨き上げた連携を光らせた。
 午後11時15分ごろ、宝木を手に、検分所となる会場近くの岡山商工会議所西大寺支所にたどり着いた羽納さん。「これを機に仕事が軌道に乗り、家族も元気に過ごせれば」と声を弾ませた。
 林グループも渦の中で宝木を懸命に守り抜いた。午後11時25分ごろ、宝木を誇らしげに掲げた重松さんが、高校の同級生だった会社員藤原三聖さん(43)=同、公務員斎藤雅之さん(44)=同=とともに、仲間の肩に担がれて同支所に到着。「わっしょい、わっしょい」と気勢を上げ、余韻に浸った。
 グループでの宝木獲得は11回目だが、3人にとっては20回以上の挑戦で初めて。「実感がない。夢のよう」と重松さん。藤原さんと斎藤さんも「仲間と喜びを分かち合いたい」と喜びを爆発させた。
 今回は、国重要無形民俗文化財の指定が決まって初の西大寺会陽。宝木を獲得した福男に他人の幸福を願う誓約書を書いてもらい、観音院の僧侶が読経する「祈りの儀式」が22年ぶりに復活した。
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会陽から一夜明け「あと祭り」 岡山

西大寺会陽から一夜明けた21日、舞台となった西大寺観音院(岡山市東区西大寺中)一帯で恒例の「会陽あと祭り」が始まり、多くの家族連れらが足を運んだ。3月6日まで。
 初日は観音院境内と隣の向州公園に松や梅などの植木をはじめ、飲食物を売る約120の露店がずらりと並んだ。訪れた人たちは、宝木争奪戦の余韻が残る本堂で福にあやかろうと祈願した後、目当ての品物を買い求めたり境内を散策したりしていた。
 家族5人で訪れた瀬戸内市の自営業男性(36)は「天気も良く、にぎやかな雰囲気で楽しいですね」と話していた。
 28日は子どもたちが華やかな衣装を着て観音院周辺を練り歩く「稚児入練(いりねり)供養」があり、最終日の3月6日には護摩をたいて無病息災や商売繁盛を願う「柴燈(さいとう)護摩」、音楽や踊りのステージなどを繰り広げる「会陽アト祭り結願(けちがん)祭」が行われる。

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岡山 「会陽宵祭り」でムード盛り上げ

20日の西大寺会陽を前に、前夜祭「会陽宵祭り?神仏の響(ひびき)」が19日、会場となる西大寺観音院(岡山市東区西大寺中)で初めて開かれ、祭りムードを盛り上げた。
 学芸館高校(同西大寺上)の和太鼓部、地元住民らのタップダンスグループ「西大寺達歩(たっぷ)団」が出演。会陽当日に裸群が宝木(しんぎ)を争奪する本堂やその周辺で、赤い法被姿で力強いばちさばきを披露したり、坪井綾広副住職(39)の読経に合わせて華麗なステップを刻んだりした。
 岡山県和気町の看護師女性(52)は「見応えのあるステージだった。明日の本番も楽しみ」と話した。
 観音院によると、かつては会陽3日前に宝木を模した「宝筒」を奪い合う「地押し」と呼ばれる祭りがあったが、50年ほど前に途絶えた。往事のにぎわいを求める地域住民の声を受け、観音院が前夜祭を企画した。
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0302
岡山 「西大寺会陽」国重文に正式指定

日本三大奇祭の一つで、室町時代から西大寺観音院(岡山市東区西大寺中)に伝わる裸祭り「西大寺の会陽」が2日、国重要無形民俗文化財に正式指定され、保護団体の西大寺会陽奉賛会(伊原木一衛会長)に指定証書が交付された。
 西大寺会陽は1510年に始まったとされ、まわし姿の男たちが福を求めて木製護符の「宝木(しんぎ)」を奪い合う。毎年2月の第3土曜夜に行われ、507回目の今年も約1万人が参加した。国の文化審議会は「伝承状況が良好で規模も大きく、会陽の典型例として貴重」と評価し、指定するよう答申していた。
 この日、東京都内で交付式があり、奉賛会の大森実副会長に青柳正規文化庁長官から証書が手渡された。大森副会長は「先人の尽力が大きかったからこその指定。これから100年、200年続けていく自信と誇りをいただいた」とし、ともに出席した松岡徹副会長も「ずっと続けていくことに意義がある。大事にしていきたい」と述べた。
 岡山県の国指定重要無形民俗文化財は4件目。指定により伝承者の養成や記録の保存などに国の補助が受けられる。
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参考
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